新型コロナの恐怖をあおる偏向メディアの罪

 東洋経済9月12日号に,大崎明子氏が執筆した「ニュースの核心」に非常に興味深い記事が掲載されていましたので転載します。

 『新型コロナウイルスは世界的に流行したことで,通常の感染症の枠を超えて,政治,経済,社会に大きな影響を与えた。

 だが,日本では何十万人死ぬといった脅威があるウイルスでないことがわかってきた。8月29日時点で新型コロナの検査によって陽性と判断された人は累計6.7万人,死者数は累計で1263人。これに対し例えば季節性インフルエンザはワクチンがあるのに例年1000万~1400万人がかかり,治療薬があるのに昨年は約3500人が亡くなっている。

 日本を含む東アジアで死者が少ないことについては免疫,体質の違いなどの指摘があるが,現時点ではまだ解明中である。ただ,欧州でも7月以降は,感染者が増えても死者はあまり増えなくなっている。ウイルス異変や集団免疫の獲得はこれまた研究途上だが,高齢者の隔離や治療の進歩には一定の評価がある。

 実態に合わせて,日本政府は8月28日の対策会議で,新型コロナについて指定感染症としての措置を見直す方針を発表した。

 現在,新型コロナは結核,SARS,などと同じ二類相当で,これにより入院勧告・措置や場所の消毒・物件破棄の要請ができる。さらに,2月14日に無症状病原体保有者も原則的に入院させるという一類の扱いが適用されており,これはエボラ出血熱・ペスト並みだ。

 見直しには,季節性インフルエンザも流行する冬に備え病床を重傷者優先で確保しておく狙いがある。これが季節性インフルエンザ同様の五類扱いとなれば,大転換を意味する。高齢者や基礎疾患がある人の重症化や死を防ぐことに対策の軸を移し,感染拡大はある程度容認することになるからだ。

 冬の到来を前に見直しには反対意見も強く,まずは,無症状者を自宅療養するなど部分的な習性から進めるのだろう。しかし,いずれは五類の扱いになり,日常を取り戻す未来が見通せる。

目に余るメディアの偏向

 実は4月ごろから,新型コロナウイルスは無症状感染者が多いため,感染は広がりやすいが死者数は比較的少ない感染症ではないかと指摘する声が専門家の間から出ていた。ところが,テレビ,大手新聞といった主要メディアはもっぱら「恐怖のウイルス」という報道を一致して続け,その姿勢は偏向と呼ぶしかないものだった。

 もとより視聴率狙いのワイドショーは100%の精度が保証されないPCR検査で国民全員を検査し,隔離しろなどと人権軽視の主張を続けた。中立報道を旨とするNHKや民放のニュース番組,大手新聞も重傷者や死者の少ないことにはほとんど言及せず,感染拡大ばかり喧伝してきた。また,「何十万人死ぬ」「ニューヨークやミラノのようになる」「PCR検査数が少ないから日本の対策は失敗」といったコメントをする識者ばかりを出し続けた。そうしたあおり報道によって,過剰な恐れ,感染者に対する差別が広がったのだ。

 ネット上には「反対の指摘をしたら放送時にカットされた」「あたかも別の意見のように切り取られて使用された」「(テレビや新聞の依頼に)異なる見解を述べたらカットされた」などの研究者や医師たちのコメントがあふれた。

 こうした中で,人々はネットなどで感染症の専門家による最新の論文や意見を集め,メディアが大々的に取り上げる意見に疑問を持ち始めた。新型コロナに関する多くの情報・知見が整理されていくにつれ,人々はメディアの呪縛から解かれ,テレビ,新聞離れ,受診料支払い拒否がさらに加速するのではないかと予想している。』

 卓見です。