失言

「まだ東北で,あっちの方だから良かったけれど」という発言が災いし,今村復興相が辞任に追い込まれました。たぶん大臣が言いたかったことは,「東北なので良かった」ということではなく,首都圏で起きたらもっと甚大な被害が出ていた,ということなのでしょう。確かに発言を読む者の都合で切り取ってみると「東北で良かった」とも読めますので,この言葉によって炎上が起こることは仕方ないところなのかもしれません。

しかし,今回の報道について思うところは,言葉尻をとらえすぎた魔女狩りに近い世の中をつくっているのではないか,という懸念です。今回の発言では東北は深刻だが,首都圏で起きればさらに深刻な事態となっていた,という比較を述べたかったと解せるわけですが,その説明の中に「良かった」という言葉があったことで糾弾されたわけです。権力者へ向かうのはマスコミの常とは思いますが,前後の文脈からして「首を取る」ところまで追い込む問題であったのか,慎重に考えてみる必要もありそうです。

今村大臣は少し前にも自主避難者が帰還するかしないかは「個人の判断」であるとして,「フリーの記者」と押し問答となり,「無責任」の烙印を押されました。しかし,そもそも「自主」避難と要請に基づく避難とを混同し同列に扱うのか否かという,前提となるべき課題があるのです。それを端に「無責任」と言われてしまえば,責任者として怒るのもむべなるかな,怒るということは左様に責任を持って取り組んでいることの証でもあると思います。

ただ,こうした事件があって間をおかず今回の報道と辞任劇であり,脈略的なものを感じてしまうのは私だけでしょうか。こうしたマスコミやそれに伴って形成される世論によって発言や行動が制約され,委縮してしまってはダイナミックな政策は打ち出せません。
大臣の発言がどうであったかの前に,どのような仕事をしてきたのかを見極めた対応というものがなくてはならないと思います。普段から関心を寄せる必要性と,無関心でいながら不適切発言だけに関心を寄せるという在り様は厳に戒めなければならないと思います。